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ちゃんと生きてます、焦です;

夏休みの課外が終了し、今日から夏休みですw
課題はまだまだありますが…;
お祭りあったり部活の友達と出かけるのが楽しみですw
姉も帰ってくるそうなので、その時はカラオケ行ってきまっすよ!!

今は810の日に向けてもそもそ短い小説をば…!
510は逃したからな…orz

その他いろいろネタは出てますが…
最近はいろいろな方面にたぎって仕方ないですな^p^←

今日は昔書いた音速針鼠文をつづきより~
無駄に長いです;;お時間あるときにどうぞ^^
いつものように捏造たっぷr(ry







時が来たのだと思った。
彼が大切に思っているあの忌まわしい青い風が目の前で染まっていく。

でも、それで良しとはできなかった。
彼の表情が、悲しそうに、どこか訝しげに歪んだ。

僕が見たのは。
あれは、

彼―――

 

青い風は突如悪しき旋風へと姿を変えた。
気が付いたら、
彼の姿は、何処にも無かった。

雨が大地を濡らした。
僕の頬も濡らした。
姫が泣いている。
桃色の体が水滴を滴らせてもその細い体がいくら濡れて冷やされても彼女はそこを動かなかった。
彼がいなくなるなんていつものことだ。
しかし、今回は何かが違くて。
だから皆、こんなにも不安なんだ。
僕はその場を離れた。
黄色いキツネの少年も赤いハリモグラの青年も姫も蝙蝠の宝探し屋も誰もかも何もかも置いて。
ひとりになりたかった。
でも。
僕の後ろをついてくる二つの影。
機械と僕の映し。
機械の青と影の黒。
金属音と無音。


「…何の用だ」
しばらくしてシャドウが口を開いた。
彼の身体は冷え切っている。
しばらく…それは三十分やそこらの話ではなかった。
もう何時間経っただろうか。
エミーたちに降りかかった不安、恐怖…様々な感情。
それはシャドウにも等しく降りかかったもので。
何時間も、彼は動かなかった。
〔青き風の失踪に皆、気を落としているようだな〕
機械音混じりの声が耳に届く。
メタルソニック――かつてソニックを倒すためにDr.エッグマンが造りだしたメカ。
いつしか彼は自我を持ち、その力は創造主の手にさえ負えなくなっていた。
彼の反抗を、以前ソニックたち…ソニックヒーローズが止めた。
その後オメガに回収された彼のところに、シャドウは時折訪れていた。
特別、会いたかったわけでも、特別、話したいことがあったわけでもない。
ただ、彼の前に立って自問を繰り返していた。
――自分は本当にオリジナルなのか。
ある時口に出してしまった問いに、メタルソニックは答えた。
――つまりは似たもの同士という訳だ。
どういうことだ、と問うた。
――簡単なことだ。実に単純。
  俺は「本物を倒す」という理由のためにいる。
  お前は「自分の正体を知る」という理由のために生きる。
  「理由がないと生けない」
  つまり俺達は似たもの同士と言えないか?
そう言われたとき、何かがシャドウの中で確定した。
迷いが消えた。
答えは見つかった。
――知らないな。
――ならば、どう思う?

――僕は僕だ。お前とは…違う。

そう言ったシャドウに、メタルソニックは微笑んで言った。
――次の最後も、その答えに辿り着けることを祈ってるよ。
それから彼はしばらくの間眠りについた。
その後、目覚めたと聞いて彼の元を訪れると…。
…気に入られている現在に至るとだけ言っておこう。

『きみも同様にして気を落としているのだろう?』
低い声が脳に響く。
メフィレス・ザ・ダーク。
ルージュの持ち出した“闇の帳”に封印されていたイブリースの影。
シルバーに未来を壊したイブリースを復活させたイブリース・トリガーはソニックだと嘘を教え、彼を殺させようとした闇。
その姿は、シャドウを鏡に映したようだ。
違うところといえば、赤いメッシュではなく、くすんだ緑色だというところ。
それと、手首と足首の辺りが氷が固まったように尖っているところだ。
初対面の時から、こちらにもまた気に入られていたようで、現在に至る。

二人の問いかけに、シャドウは首を振った。
「…僕は気を落としてはいない」
そう。
気を落としていない。
だって。
あれは、
「あれは――本当の彼ではない」

そう。
だからこそ。
ここまで、胸がざわつく。
頭が、混乱する。

「きっと彼は――他の、何か大事なことで――僕らの元を離れたんだ。何のためか…僕にはわからない…」
考えがまとまらない。
彼は何故僕らの元を離れた?
何があって?
先程の、あれは誰だった?
何が目的で?
何のために、彼の姿を?
疑問の波に呑まれながら、ひとつの思いに手が届く。
…本物の彼を探しに行きたい。
「――うっ…!」
ざわり、と視界にノイズが混ざる。
反射的に頭を抱え、俯く。
全身の血管を通る血液が、その中に混ざる因子が思考を遮る。
今にも血管を細胞を皮膚を突き破って外に出てきて姿形を形成しそうなざわめき。
ふらり、とよろける。
倒れる寸前に、冷たく硬いものが身体を支えてくれた。
柔らかい、闇に触れるような感触が、額の汗を拭ってくれた。
瞼をなんとかこじ開ける。
目をふらふらと泳がせ、確認できたのは、自分を支えているメタルソニックの腕、汗を拭ってくれたメフィレスの手だった。
〔…ブラックドゥームの残した因子か〕
メタルソニックが呟く。
弱々しく、シャドウは頷いた。
プロフェッサー・ジェラルドと共に、自分を造りだした悪。
ブラック彗星を母星とする、宇宙からの使者。
それがブラックドゥームだ。
地球を支配しようとしたところをシャドウが喰い止め、彼はその時自分の過去と決別した。
ブラックドゥームとブラック彗星はこの世から消えた。
しかし、シャドウの中に組み込まれた因子は、消えることはなかった。
今でもこうやって暴れ、彼を飲み込もうとする。
『いつまで此処に残っているつもりなんだ…。全く、執拗なものだ』
シャドウは足に力を入れ、メタルソニックの腕をやんわりと遠ざける。
メフィレスは“執拗”と言うが、それは違うと思った。
これは自分を構成する、いわば遺伝子。
これがなければ、僕は僕でなくなってしまうのかもしれない。
そう思うと、少しだけ怖かった。
僕がこうして苦しむたびに、ソニックは心配して声をかけてきてくれた。
彼はこの因子を取り除く方法を探すと言ってくれた。
でも僕は、そんな小さな恐怖心から、その申し出を断ってしまった。
今は辛くても、生きていくうちにこの苦しみも感じなくなってしまう気がして。
こう言うのは悔しいが、やはり、怖かった。
だからこそ、負けていられなかった。
まだ血液の中の因子がざわめいている。
しかし、青き風を探しに行きたいと思う気持ちばかりが膨らんで。
同時に、あの紛い物が何者だったのか突き止めたくて。
僕は丘に登り、雲の切れ間から差し込む光を背に、僕の後ろに待つ二人に言った。
「ソニックを探しに行く。さっき消えた紛い物ではない、何日も前に消えた本物のソニックを」
この二人なら、ついてくる。
だからこそ、言った。
「ついて来い」

機械は左手で作った拳を右肩に、闇は右手で作った拳を左肩に当て、跪きながらこう言った。

〔『仰せのままに。我が黒き影』〕

さしずめ、Team Dark Again といったところか。
そう呟く声が聞こえたような気がした。

 

それから何日経ったのか。
三人は闇雲にソニックを探し続けた。
どこにいそうだとか、どこに行きそうだとか、考え無しに。
ただ走っていれば、会えそうな気がした。
だが、そう簡単にはいかなかった。
それでも彼らは走った。
世界の端から端まで、余すところなくまわるように。

ある日、三人が迷い込んだのは、ひとつの廃墟。
人が使わなくなって一体何年経ったのか、屋内はすっかり錆びれてしまっている。
外では雨が降り続いていた。
まるで世界から英雄が消えたのを悲しむように。

その雑音に混ざって、ひとつの影が揺れる。
はっきりとした形を持たない、とけるような影。
それは三人を見据え、静かに雨に融けた。


「―――っ!?」
廃墟の扉が音を立てて閉まった。
間髪を入れず、轟音と共に天井が崩れ落ちてくる。
〔敵襲…!?〕
『まさか…誘い込まれたというのか!?』
呟く二人の傍にシャドウは駆け寄り、手のひらを落ちてくる瓦礫に向けた。
意識を集中し、持ち歩いていた奇跡の宝石――カオスエメラルドを握る。
「カオス・コントロール!!」
光が壁を作り、瓦礫がその光に包まれる。
すると、瓦礫の周りの時が止まった。
時空を大きく歪ませるカオス・コントロールの力だ。
メフィレスが闇を凝縮させ、爆発させる。
瓦礫は四方八方に飛び散り、粉々になった。
〔…シャドウ、俺の傍を離れるな〕
辺りの探索に移行しようとしたシャドウをメタルソニックが制す。
メタルソニックは辺りを見回した。
彼の目の中で、赤い線が何度も往復する。
幾重にもフィルターをかけ、敵の存在を感知しようと機械特有の機能を働かせているのだ。
注意深く、辺りを確認する。
研ぎ澄まされた機能が、敵影と思しき物をやっと感知する。
〔そこか!!〕
容赦なく、メタルソニックは自身の手首の辺りに内蔵された銃で狙いを定め、発砲する。
勢いよく放たれた弾丸が地面に当たると、砕けた破片や塵が煙を成した。
その中で動く影が、ひとつ。
素早い動作で近づいてくるそれを狙撃しようと、メタルソニックが狙いを定めなおす。
「Stop!オレだ!オレだって!!」
聞き覚えのある声に、メタルソニックは動きを止める。
煙が晴れると、影の正体が見えた。
「そ、にっく…?」
シャドウが思わず言葉を漏らす。
まさか、こんなところに彼がいるなんて思いもしなかった。
『貴様、何故こんなところにいる』
メフィレスが訝しげな表情で訊く。
それは尤もな質問だった。
「ちょっと面白いものを見つけてな」
質問を、ソニックは軽く受け流す。
シャドウはそんな彼を見つめた。
…何だ?
彼のはずなのに、何故か違和感を感じる。
でも、雰囲気は確かに彼だ。
先日、目の前で消えた紛い物とは明らかに違う。
なのに、どうして…。
考え込んでいると、ソニックが隣に歩み寄ってきて言った。
「お前に見せたいんだ。奥の部屋に一緒にきてくれ」
「あ、あぁ…」
半ば強引に手を引かれ、奥の部屋へと向かわされる。
違和感は拭っても拭っても消えなかった。
手を振り払うことも出来たはずだが、あまりのことに思考回路が停止していた。
同じように違和感を憶えたのか、メタルソニックとメフィレスも後を追いかけてくる。
奥の部屋へと続くドアの前にきたとき、ソニックは振り返った。
「――っ!?」
瞬間、後ろを追ってきていたふたりとの間に黒いもやのような障壁が現れた。
『これは…闇!?』
〔貴様の仕業か、ソニック〕
ふたりは口々にそう言う。
まさか、そんなはずはない。
彼が闇を操れるはずがない。
きっと何かの間違いだ。そう思ってシャドウは自分の手を放さないソニックの方を見た。
しかし、その瞬間。
拭いきれない違和感が、また襲ってきた。
そして。
「ついてこないでくれる?邪魔だよ」
なけなしの希望さえ、見事に押しつぶされた。
違和感が確信に変わる。
「貴様…っ!やっぱり、ソニックじゃな……」
「行くよ、シャドウ」
最早隠す必要もないと思ったのか、口調が変わっている。
強引に腕を引っ張られ、奥の部屋に投げ込まれた。
『シャドウ!!』
メフィレスは障壁に触れた。
この障壁が闇なら、自分の中に吸収できるはずだ。
意識を集中させ、吸収を試みる。
『…!?』
しかし、それはかなわなかった。
恐らく、この障壁は自分の扱う純粋な闇ではなく、何か異物が混入しているのだろうと瞬時に仮定する。
そうしている間に、扉は閉められていく。
〔『シャドウ!!』〕
焦りを含んだ声は、閉じる扉に吸い込まれて消えた。

「――これで邪魔は入らない」
紛い物が呟く。
「貴様…何者だ…っ」
投げ込まれたとき頭を打ったのか、はっきりしない意識をたたき起こしてシャドウは紛い物を睨む。
彼に感じた違和感はそういうことだったのか。
少しでも油断した自分が憎く感じられた。
紛い物はソニックの姿で、声で、答える。
「俺?俺は――ダークソニック」
「ダークソニックだと…!?」
シャドウは目を見開いた。
かつて仲間を傷つけられて怒りと悲しみに溺れたソニックは、闇の力にその身を委ねた。
その姿を、皆はダークソニックと呼んだのだ。
「何故貴様が此処にいる」
身構えながら問う。
元はソニックというひとりだったはずだ。
それが、どうして今僕の前に?
ダークソニックは笑い、僕に歩み寄ってくる。
「あの後ソニックは自分の中に生まれた闇を捨てたんだ。強く想うことでね。その時捨てられた闇から生まれたのが俺ってわけ」
じり、と後ろに下がり、壁に背を付ける。
ダークソニックは何の迷いもなく、歩いてくる。
素早く臨戦体勢をとった。
姿かたちが同じなら、特殊能力の有無の差はあるが、勝機が全くないわけではない。
構えるシャドウに、ダークソニックは冷たく微笑んだ。
「俺と戦うのか?構わないが…」
彼は先程通ってきた扉を見やる。
「あっちに張ってきた障壁。あれに集中する意識が消えて、あれは形を保てなくなる。そうなれば、一気にあの部屋は闇の海になって、置いてきた二人は闇に呑み込まれる。それでもいい?」
平然と、そう言った。
それを聞いては、戦いを仕掛けることはできない。
こちらからは完全に信頼していないとはいえ、あの二人は自分に尽くしてくれてきた。
自分の都合で見殺しにはできない。
この場を逃れる策は――。
シャドウはカオス・コントロールを発動しようと、エメラルドに手を伸ばす。
しかし、あったはずのそれはなかった。
また、ダークソニックの嘲笑が聞こえる。
「カオス・コントロールなら使えない。カオスエメラルドなら俺が持ってる…これだろ?さっきの」
「!いつの間に…っ」
ダークソニックが親指で指し示したのは、確かに先程使用したカオスエメラルドだった。
普通、エメラルドさえ近くにあればカオス・コントロールは発動できるのだが、念じてもエメラルドは全く反応を示さない。
周りを覆っている闇がエメラルドの力を押さえ込んでいるようだ。
それなら、と自分の足で逃走を試みる。
「無駄だよ」
「―――っ」
ひも状に伸びてきた闇が足首と手首を壁に固定する。
解こうともがくが、びくともしなかった。
手も足も出ない状況を理解して、舌打ちをする。
満足気な表情で、ダークソニックは歩を進める。
「ここまでして…今更僕に何の用だ」
心臓が早鐘を打ち始める。
僕を殺す気か。
思考はまず始めにその考えに行き着く。
しかし、それは違うとすぐに切り捨てた。
先程から感じるのは殺気ではない。
では、何か。
ダークソニックは鼻先を寄せてくる。
「殺しなんてしないさ。考えてたろ?」
「僕の心を読めるとでもいうのか?悪趣味な…」
無理矢理、笑顔を作ってみせる。
正直、先程から思考はことごとく見抜かれている。
だが、自分でも認めたくない、心に絡みつく恐怖という感情を知られることだけは避けたかった。
僕のその感情を見抜いたのか、それとも見抜かないままか、ダークソニックは笑う。
そして、僕の捜し求める青い風と同じ指を、手のひらを、僕の腕に滑らせる。
体が震えそうになるが、必死で抑える。
彼の指が行き着いたのは、僕の手首にある金色の腕輪。
「これはお前のリミッタ―だろ?」
ダークソニックが問う。
その通り、この腕輪は僕の力を制御するリミッタ―だった。
「だから何だと―――っ!!」
悟った。
彼がこれから何をしようというのか、最初から何を望んでいたのか。
「俺はこれを外して――そのときのお前を見てみたい」
悟ったことが真実だと思い知らされた。
シャドウの心臓は狂ったように鐘を打つ。
「やめろ…っ…!それだけは…!!」
それを外されたら。
それを外されたら、歯止めが効かなくなる。
自分がなくなる。
それを恐れて、今までソニックたちの前でリミッタ―を外したことはなかった。
一度だけ、彼らと、彼らの生きる世界を救うために、一度だけリミッタ―を外したことがある。
そのときはあのコスモ族の生き残りの少女が、消える寸前に僕の手首にそれを返してくれた。
だが今は。
止めてくれる人はいない。
だから、それを外してしまったら。
「お前は理性をなくし、ただ破壊しつづける兵器になる――」
かち、と外れかけの音がした。
リミッタ―を外す手順は三つ。
そのうちのひとつが通過された。
残るは、ふたつ。
「やめろっ…!放せ!それに触るな…っ!!」
「そして破壊活動をし続けたお前は、一時休息を得るために動きを止める。そこを捕まえて調教すれば――お前は俺の物になる」
かちり
やけに大きく外れかけの音が響く。
もう、恐怖を隠す手立てはなかった。
「放せ…っ……嫌だ…外すな……!!いやだ……!」
「まあ、先のことはどうでもいい。俺は最初に言った目的を達成できれば、それでいい」
かちりっ
外れた音と、外れたわっかが地面にぶつかる、音。
一瞬遅れて、悲痛な叫びが響いた。


〔『シャドウ!?』〕
闇の障壁の向こうから、叫び声が響いてきた。
こんなところで足止めを喰らっている時間はないというのに。
思ったより障壁は固く、びくともしない。
全ての手は尽くした。
しかしどの攻撃も、全て吸収されてしまったのだ。
〔駄目、か…?〕
『だが、ここで諦めるわけにはいかないだろう』
〔…ああ。その通りだ〕
言って、二人は力を集めはじめる。
凝縮された力は膨大な量だった。
これで障壁が壊れなかったら、もう本当に手はない。
でも。
やはりここで立ち止まるわけにはいかなかった。
〔行くぞ、メフィレス〕
『了解だ、メタルソニック』
狙うは、一点。
凝縮された力が一気に発射される。
二つの力はその一点で混ざり合い、ぶつかって破裂する。
全ての力がぶつかった。
障壁は、少し歪んだ。
しかし、結果はそれだけだった。
〔…っ!〕
『くそ…っ!』
悔しさに表情を歪めた。
短く息を吐く。
焦る二人の耳に、速い足音が響く。
「Sonic Wind!」
遅れて、飄々とした声。
障壁の歪みに、青い風が生まれる。
〔『まさか…!』〕
足音のするほうを振り返った。
「こんなところでぐずぐずしてるなんて、お前達らしくないな!」
急ブレーキの音と共に止まったヤツが、腕を組みながら言う。
瞬間、障壁が弾けとんだ。


黒い影を壁に張り付けていた闇は、弾かれてなくなった。
黒い影の赤い瞳は、さらに紅く染まっていた。
その手に、金の腕輪はなかった。
「俺の闇を一瞬で…素晴らしい!」
ダークソニックは笑った。
しかし、黒い影が一歩踏み出すと、その笑顔も凍った。
こめかみを、一筋の汗が伝う。
何をされたわけでもない。
彼が何を言ったわけでもない。
無言の中に潜む、殺気と絶対の力。
その圧力に圧されて、ダークソニックは動くことができなくなった。
影は彼に歩み寄り、額に手をかざす。
力が、その手に集まる。
「やめろ…何を、する気だ…」
声は、影に届くことは無かった。
力が発動する。
強大な力に、ダークソニックの全ては吹き飛ばされ、後には何も残されなかった。
カオス・ブラスト。
究極生命体に与えられた、究極の攻撃手段。
膨れ上がった膨大なエネルギーはダークソニックを消しただけでは飽き足らず、どんどん拡大して廃墟を飲み込み、崩す。
「う……っ!!」
影は頭を抱えた。
因子が体の中で駆け回って身体を中からかき乱して今形を役目を成さんと欲する。
抑えられない。
抑えることができない。
このどうしようもない破壊衝動を。
駄目だ。
抑えなければ。
しかし因子はそれを許してはくれなかった。
全てを破壊しろ滅ぼせ消し去ってしまえ。
体を中心にエネルギーが集まる。
全力で逆らいたかった。
でも因子に逆らうことはできなかった。
そうだ。
全て消し去ってしまえ。
そうすれば、こんな姿を見られることはない。
この醜い破壊衝動の塊を。
滅ぼすことこそ本意なれ。
因子はそう告げた。
思い込まされた本意が因子が脳を支配していく。
このまま全てが飲み込まれてしまえばいい。
自意識が無くなれば、気にすることは何もなくなる。
そう考えて、意識を手放そうとした。
だが。
皮肉にも、自意識というものは強く。
往生際が悪かった。
考えは、真の本意に行き着く。
この世界を、
彼らの生きる世界を、壊すというのか?
命をかけて護った世界を。
命をかけて、彼が護ってきたこの世界を。
そして何より、
彼を、殺すと、いうのか。
できるはずがないでも破壊しなければ。
頭の中がぐるぐるいろんな感情で支配される。
同じくらいぐちゃぐちゃで、何がなんだかわからなくなって、視界さえはっきりとしなくなる。
何も見えない。
何をしたらいいのかわからない。
なら。
この力、
僕の身体を中心に張られた哀しみ、
どこに
いけば
いい?
〔『シャドウ!!』〕
力を放とうとした僕の手を、両側から何かが掴む。
それは、何か。
「め、ふぃれす…めた、る…」
わかった。
彼らの目が見えた。
「――!!」
瞬間、思ってしまった。
彼らの目に、今の自分はどう映っているのか。
醜く虚ろで定まらない目をした狂気の塊は、今どう映されて、どう見られているのだろうか。
感情は真実を歪め、混乱を招く。
ふたりの表情が絶望に諦めに軽蔑に染まって見える。
血塗られた紅い未来すら見えてくる。
僕はもう駄目だ紅い未来が見える破壊衝動の塊なんだ全てを壊して壊して破壊し尽くした先に待っているのは唯の孤独ならばいっそ此処で全てを終わらせてしまいたい誰か僕を一思いに。
制御できなくなった力が歪んで解放され始める。
それはメフィレスの右腕を、メタルソニックの左腕を伝う。
叫びが聞こえた気がした。
それが自分のものだったのか、他の誰かのものだったのか、今の僕には判別できなかった。
全てを消したいでもここで力を放ってしまえばふたりが――。
考えが通り過ぎては消えていく。
もう何もすることはできなかった。
今一度意識を諦めようとした。
その時。
触れてきた温かい両手は、僕を両肩から創り変えていく。
「しっかりしろよ。シャドウ」
懐かしい声が今度は耳から僕を創り、全身を創り変える。
数日、ほんの数日聞かなかっただけなのに、何故こんなにも懐かしく聞こえるのだろう。
両手が声が僕を救う。
視界がはっきりして僕が認識したのは、
「ソニック……?」
捜し求めていた、青い風。
彼の存在が僕の意識を引き戻す。
嬉しかった。
捜し求めていた彼が見つかって。
でも。
それ以上に、
「僕から…離れろ…!」
近くにいては、駄目だ。
そう思った。
もう溜め込んだ力は制御できなくなっている。
それは先程からわかっていた。
だから。
だからせめて彼は巻き込みたくない。
どうか僕に尽くしてきてくれたふたりを連れてどこか遠いところまで逃げて欲しい。
 
「消えるのは僕だけでいい…っ」
 
大体僕はアークの墜落を防いだときに消える運命だったのだから。
ここまで生かしてくれた世界を壊すわけにはいかない。
でも。
逃げろと言っても、彼は逃げなかった。
それどころか、僕の頬を伝う感情の塊を拭ってくれた。
「シャドウ。落ち着いて考えてみろ」
彼はいつもと変わらぬ笑顔を僕に向けた。
「お前はもう、自分の力を制御できてるじゃないか」
「え――?」
弾かれたように、辺りを見回す。
確かに、あれから力を抑えられていなければ消し去ってしまっていたかもしれない世界の一部は、何事も無かったように呼吸を続けている。
〔俺たちも、消えてはいない〕
『きみが制御できていなかったのは、力ではなく感情だった、ということだな』
左右からの声に視線を戻し、交互に見る。
メフィレスとメタルソニックは、シャドウが落ち着いたのを確認すると、手首にリミッタ―を取り付けた。
しかし、その彼らには、シャドウの腕を掴んでいたほうの腕がなかった。
「!まさか、さっきの――」
〔気にすることはないさ。〕
自責の念に囚われそうになるシャドウを、ふたりはなだめる。
メフィレスは闇を集めて腕を再構成し、メタルソニックは廃墟の瓦礫を取り込んで同様にする。
〔お前の為なら腕の一本や二本、取るに足らない〕
『きみの為なら腕の一本や二本、取るに足らない』
二人の声が見事に揃う。
腕が無事に再構成されたのを見て、シャドウはとりあえず安堵したが、どうしても少しの罪悪感は残る。
「すまなかった」
彼は一言、そう謝った。
二人は俯く彼の顔を、上げるように促す。
「シャドウ」
ソニックが口を開いた。
「マスターエメラルドの力を発動させるときの呪文、覚えてるか?」
唐突な質問に、シャドウは戸惑いながらも頷いた。
カオスエメラルドの暴走を止めるとき、アークの一室でナックルズが唱えた呪文。
それはナックルズ族に代々受け継がれているものであり、マスターエメラルドを守護する使命を請け負い生まれてきた彼に自然と浸透したものである。
ソニックは人差し指を立てて早口に言う。
「“混沌は力、力は心によりて力たり”――混沌はカオスの力、心はそれを扱う奴の気持ち――ここまで言えば、お前にはもうわかるだろ?」
理解した。
今、ソニックはどうして今までリミッタ―を外すと自我を失ってしまうか、それを僕に説明してくれている。
つまりは。
「メフィレスが言った通り、お前は感情を制御できてなかった。リミッタ―が外れれば自分は自我を失うっていう強い思い込みの所為でな。気持ちがしっかりしなきゃ、力が気持ちを支配する。そういうことだったんだ」
「…僕としたことが、そんな簡単なことを忘れてしまうとはな」
軽く、自分を嘲笑った。
唯の思い込みに振り回されていたとは。
そう落ち着いて考えると、今までの自分が恥ずかしい。
何はともあれ一件落着…の雰囲気の中、シャドウは根本の目的を思い出す。
「ソニック、きみは一体今まで何処にいたんだ?」
そもそも、彼を探すために自分達は世界を回っていたのだ。
あれだけ不安にさせられて、何も問いたださないまま終わりにはできない。
「あー…それは……帰ってからでもいいんじゃないか?」
上手くはぐらかせて帰ろうとしたソニックを、メタルソニックとメフィレスが止める。
〔ふざけるのも大概にしろ〕
『僕たちをここまで苦労させて何もなくただ世界を走り回っていた――では済まさないぞ』
一歩間違えればソニックを殺す勢いの二人を見て、最初は場を濁すように苦笑いしていたソニックだったが、観念して口を開いた。
「シャドウの中の因子を取り除く方法を探しに行ってたんだよ」
予想外のまっとうな理由に、驚きを通り越して呆けてしまう。
「それなら…一言告げてくれてもよかっただろう?」
「だってお前に言ったら止めるだろ?しかも結果は手ぶらだし…Coolじゃないしなぁ…」
後半口篭もるソニックに、普段の飄々とした雰囲気はなく、歳相応の姿が見え隠れした。
それが少し可笑しくて、僕は笑う。
「僕の為を思ってくれたのは嬉しい」
素直に告げると、彼は驚きを見せる。
「だが急に消えたとあっては、僕はともかく姫が黙ってはいないだろう」
種類は違えど、彼にも少し恐怖を味わってもらおう。
僕の言葉に、彼は元から青い顔をさらに青くする。
少しくらい僕らの気持ちを知ってもらわなければ。
その権利がこちらにはあるはずと、メフィレスとメタルソニックに目配せをする。
意図を読み取って、彼らは僕に微笑んだ。

 

 


僕の身体に残る因子。
きみたちはこれから先、消えることはないかもしれない。
唯、僕はそれを恐れはしない。
いつかきみたちは僕を喰い尽くすだろう。
それはそれで、何年後か、何十年後か。
僕が幸せの中にいれば、それは甘んじて受けよう。
だから。
だからせめて今は。
彼らと共に帰らせてはくれないだろうか。





お疲れさまでした!
趣味で製本していた時のものなので、無駄に長かったです;;
たぶん10~13ページくらい…あれ、F/F捏造長編とあんまり変わらない…?←
捏造がたっぷりで申し訳ないです^p^
とりあえず、うちでは影っこが愛されておりますww←

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