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早速一話目をアップします!

タイトルが決まる気配を見せないのですが…orz
決まり次第↑のタイトルのところで使います!

では、続きからどうぞ。






「待て!止まれ!!それ返せーーー!!」
生い茂った緑を掻き分け、盗賊・ジタンは少し離れたところに見える影を追いかけていた。
影の手には、東の遺跡に眠ると言われている秘宝が握られている。
それは先ほど、ジタンが東の遺跡にて見つけたものだった。
秘宝の存在は随分前から世界中の街で知られていたが、東の遺跡のトラップが複雑に、
そして大量に仕掛けられているため、今まで誰も近づけなかったのだ。
ジタンは冒険者としてレベルが高いわけではない。
だが、今回は秘宝の守護者と呼ばれる怪物は居ず、敵はトラップだけだったので、ジタンは
盗賊の中でもトップクラスの素早さを生かしてトラップをかいくぐり、秘宝の元に辿り着くことができた。
秘宝――透晶玉はレア度8を超える超レアアイテム。
お宝捜しを生きがいとするジタンにとって、見逃せないものだった。
遂にその秘宝を手に、というところで、いきなり目の前に現れたのが、今必死で追っている影。
影といっても、遠くにいるからそう見えるだけで、実際はジタンと同じ人間だった。
薄紫混じりの長い銀髪、紫の瞳。
職業は見た感じ高魔導士といったところか。
「ちゃんと足元を見ながら追いかけないと危ないよ?」
遠くで高魔導士が言う。
出逢った時から、高魔導士は余裕の表情しか見せないし、
余裕たっぷりのセリフしか吐かない。
その態度がジタンの神経を逆なでする。
「てめえに言われたくな――っ!?」
反論しようとした瞬間、木の根に躓き、ジタンは前に転げた。
ぶつけた後頭部を摩りながら、逃げられたかと顔を上げる。
「せっかく忠告してあげたのに」
高魔導士の顔が、至近距離にあった。
「うわっ!?お、お前…なんで戻ってきてんだよ!」
普通逃げ切るところだろ、とツッコミを入れるジタンをよそに、高魔導士は辺りを見回す。
草木が、不自然なざわめきを起こした。
小さな小さな音と動きだった。しかし、高魔導士もジタンも、
その小さな変化を感じ取る。
「何故戻ってきたか――強いて言うなら、そうだね…」
高魔導士の周りを、白い光が回る。聖属性の上級魔法・ホーリーだ。
「自分の身の危険にも気付けず、美しい僕だけに見惚れていた可愛くも
哀れな小鳥を助けるため――かな」
光が八方に飛び散る。
光は、茂みに潜んでいた凶暴な獣型モンスター・ファングを捉え、その毛皮を焦がした。
魔法の威力が弱められていたのか、軽症で済んだファングは恐れをなして
森の奥深くに逃げていった。
「…誰がいつ見惚れたって?」
逃げ行く狼の後姿から視線を外して、ジタンはため息混じりに言った。
「おや、違うのかい?僕だけを追いかけていたのに」
「それはお前が横取りしたお宝を取り返すためだろ!!」
怒鳴ると、高魔導士は笑った。
そして、手にもった秘宝をジタンに差し出す。
「…え?」
「返すよ。別にこれが欲しかったわけじゃないんだ。…からかいがいのありそうな子を見つけたから、ついつい手を出したくなっちゃって」
「わけわかんねえし。いちいちムカツク奴だな…」
ひったくるように秘宝を受け取ったジタンは、目の前から少し目線を逸らした。
「…ありがとな」
「ん?」
「助けてくれたろ?さっき。だから」
ムカツクけど、とジタンは歯切れ悪く礼を言った。
「見殺しにしちゃ、夢見が悪いからね。――立てるかい?」
高魔導士が差し出した手を、ジタンは少し躊躇いがちに握った。
すっかり高魔導士のペースに飲み込まれてしまったのが、ちょっとばかり悔しかったのだ。
そんなジタンに気付いていながらか否か、高魔導士は微笑んだ。
「キミ、名前は?」
「ジタン。職業は見てのとおり盗賊。」
「ジタン、ね。僕はクジャ。変換者だよ」
「変換者!?」
思わずジタンは声をあげてしまった。
変換者――聞いたことがある。
世界に何人といない、唯一ギルドでの申請なしで、いつでもどこでも自在に職業を
変換できる職業。
しかし、今まで彼らに出会った冒険者は居ず、その能力については謎が多かった。
「突然だけどジタン。僕とパーティを組まないかい?」
「……え?あ、なんだって?」
驚きのあまり、頭が上手く働かない。
「だから、僕とパーティを組もうって」
飽和状態の頭に、突拍子も無い申し出が割り込む。
「ちょっと待て。えー…っと…どうして?」
「言っただろう?小鳥を助けるって。それに、独りにはもう飽きたしね」
「やっぱわけわかんねえ…確かに独りは飽きるし、お前はそれでいいかもしれないけど
オレには何か得があるのか?」
訊くと、クジャはしばらく考える素振りを見せた。
「そうだね…まず、見たところキミと僕のレベル差は7。少しでも強い味方がいたほうが
いいだろう?それと、秘宝の守護者には物理攻撃が全くといっていいほど効かない奴が
いる。キミは魔法を使えないが、僕はどんな職業にもなれるから、強力な上級魔法や
守護者に有効な技が何だって使える。――それで充分じゃないかい?」
「でも、正直お前のこと信用できねえし…」
「信用、ねぇ…もし僕が警戒しなければいけないような極悪非道の悪人なら、さっき
ファングの群れからキミを助けなかったと思うけど?」
「そうだけど…」
「これから一緒に行動していくうちに信用してもらえるように努力するよ。行き先や
ギルドで受ける依頼もキミに任せる。好きにしていい」
「まあ…そりゃ、オレが得することばっかりだけど…どうして、そこまでしてオレと
パーティを組もうとするんだ?」
ジタンが訊ねると、クジャは笑った。
先程までの微笑とは違った、少し、冷ややかな、笑い。
細く長い指が、ジタンの頬をなぞる。
「僕にはわかるんだ」
「…っ……何が、だよ」
「それはキミが一番よくわかるんじゃないかい?」
紫の瞳に、全てを見透かされているような感じがする。
心臓が早鐘を打ち、額には汗が滲む。
「わからないなら、教えてあげる」
声が、旋律に聞こえる。
恐ろしく甘美な、誘導の旋律。
「…何のことだか、さっぱりだな」
だが、ジタンはその旋律に耳をふさいだ。
わかっている。
わかっているから、教えられる必要は無い、と。
しばしの沈黙の後、ジタンはクジャに向き合い、問う。
「…自分のこと、自分で守れるんだな?」
「ああ」
「絶対、オレの目の前で死んだりしないな?」
「約束するよ」
即答で返すと、ジタンは俯いて、今なお頬に触れている手に自らの手を添える。
クジャはギルドから冒険者に配給されるモニターフォンを取り出した。
画面にはパーティ申請処理終了の文字。
「キミのIDも入力したよ。侵入者の職業も齧ったことがあったから。
…つまり、最初からキミに選択肢はなかったってこと」
「おいちょっと待てよ!じゃあ何だよ今の!!わけわかんねえだろうが!!」
「ちなみに、僕が変換者ってことはギルドにも内緒だから気をつけてね。」
さも当然のように言うその態度にはいっそ感心する。
ジタンは長い長いため息をついて、クジャに向き直った。
「…何かあったら、すぐパーティ解散するからな」
そう言ってクジャを見ると、切れ長の目が少し見開かれていた。
でもそれはすぐにまた微笑みの形を取り戻して、細くなる。
「随分と素直だね。もう少し嫌がると思ったんだけど」
「仕方ねえだろ、お前が勝手に申請しちまったんだから。独りは飽きてたし、
それに…お前は死なないって約束したから」
お宝捜しには、危険がつき物。
一歩間違えれば命を落とすことだってある。
だがそれは、独りじゃなければ覆すこともできる。
自分の能力を測れないほど自分は愚かじゃない。
ジタンはそう言ってクジャの隣に立った。
「行こうぜ。不本意だけど…よろしくな」
「不本意、ね。まあ今はそれでもいいさ」
緑を掻き分け、ジタンは街がある方向に向かって走り出した。
その後ろを、遅れない程度の速さでクジャが追う。

「…そのうち、僕と一緒に居たいと泣いて懇願させてあげるよ。
嫌でも、一緒になるんだから――」
変換者の目に宿るは、狂気の炎。
赤き名を持つ異端者と似て非なる、妖しい炎――




あとがき
記念すべき一話目…ですが、なんだかちょっと、え?って感じで(←)
誤字・脱字が無いか心配です…(><)
見つけた!って方がいらっしゃいましたら、遠慮なく言ってやって
ください!!
次回は長くなりそうです(汗)
いや、もうできてはいるのですが、10ページって…orz
精一杯何とかやっていきますので、これからもよろしくお願いします!

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